「ピアノ、ちゃんと弾けないとリトミックってできないのかな……」
そう感じている先生、いませんか?
実は私も、ずっとそう思っていた一人です。
ピアノが苦手な私がリトミックの指導を任されたとき、とにかく「上手く弾かなきゃ」とピアノに必死になっていました。でも——それが大きな間違いでした。
この記事では、私が実際に失敗した経験をもとに、ピアノが苦手でも現場で使えるリトミック伴奏の考え方をお伝えします。完璧じゃなくていい。その理由、一緒に考えてみましょう。
「上手く弾かなきゃ」が、一番の失敗だった

リトミックの先生なんだから、ちゃんとピアノを弾かなきゃ。
そう思っていた頃の私は、ひたすらピアノに必死で
子どもたちの顔を、ほとんど見ていませんでした。
忘れられない場面があります。
リトミック指導を始めたばかりのころのこと。レッスンで「むすんでひらいて」を取り入れることに決め、おしゃれな伴奏を一生懸命練習してから臨んだのですが——。「よし、今日はばっちり!」と思っていたのに、子どもたちの前に立った瞬間、緊張でピアノはグダグダに。歌だけ続けてピアノはもうめちゃくちゃでした。
その間、子どもたちはぽかん……。



あのときの、子どもたちの「え、どうしたの?」という顔。 今でも忘れられません(笑)。
頑張って練習した伴奏が、かえって足を引っ張ったんです。
あの経験で気づきました。ピアノに必死になるほど、子どもたちへの声掛けが減っていく。子どもの動きを見る余裕がなくなっていく。そして緊張や焦りは、そのまま子どもたちに伝わってしまう。
転機は、伴奏をシンプルにしてみたとき。音をそぎ落としたら、不思議なくらい子どもたちの顔が見えるようになりました。声をかける余裕が生まれ、レッスンがみるみるうちに変わっていきました。
「上手に弾く」より大切なこと
リトミックの伴奏で大切なのは「正確に弾くこと」ではありません。
子どもの動きに合わせて音を変えること。
子どもにこう動いてほしいというイメージを、音楽に反映させること。
これがリトミックの伴奏の本質です。
リトミックを学んでいくうちに、自然と気づいたことがあります。
ピアノの発表会とリトミックの伴奏は、ゴールがまるで違う。発表会は「完璧な演奏」を目指すけれど、リトミックでは「子どもがどう動いているか」「どう動いてほしいか」が、そのまま音楽になっていくんです。
子どもたちがゆったり動いていたら伴奏もゆっくりに。もっと大きく動いてほしければ音を強くする。止まってほしければ音を消していく——そのやりとりそのものが、リトミックです。
この考え方が腑に落ちてから、私のリトミックは変わりました。
ピアノが苦手な先生に伝えたい、現場で使える4つのコツ
コツ① シンプルな和音3つで始める
ハ長調(ドの音から始まるキー)なら、基本的に C・F・G の3つの和音があれば、たいていの曲は弾けます。
むすんでひらいて、チューリップ、きらきら星……現場でよく使う曲のほとんどが、この3和音で成立します。
- C(ドの和音):ド・ミ・ソ
- F(ファの和音):ファ・ラ・ド
- G(ソの和音):ソ・シ・レ
3つの音を同時に押さえるのが難しければ、まずは「主音1つだけ」でもOKです。 C なら「ド」だけ、F なら「ファ」だけ、G なら「ソ」だけ。 左手が1音でも、メロディや曲の流れはちゃんと成立します。 「3音同時に押さえること」はゴールではなく、できたらやるオプションくらいの気持ちで!
「完璧な和音」を目指すより、まず音を鳴らし続けることを優先してみてください。
コツ② テンポを「崩す」のを恐れない
リトミックの伴奏では、テンポを意図的に変えることがとても大事です。
子どもたちがゆっくり動いていたら伴奏もゆっくりに。先生が「止まれ!」と言う場面では、音をぴたっと止める。この「音と動きを連動させる」ことこそが、リトミックの醍醐味です。



メトロノームに合わせて弾こうとしなくて大丈夫です。
むしろ「子どもを見ながら音を変える」ことが、
リトミックではいちばんの伴奏になります。
コツ③ 「合図の音」を決めておく
「次の動作に移るとき」「止まるとき」「始めるとき」——それぞれに決まった弾き方を作っておくと、ピアノへの集中が減り、子どもを見る余裕が生まれます。
| 場面 | おすすめの音の使い方 |
|---|---|
| 「始め!」の合図 | 低音からグリッサンド(鍵盤をさーっと流す) |
| 「止まれ!」の合図 | リタルダンド(だんだん遅く)やデクレッシェンド(だんだん小さく)で自然に止まる |
| 動物に変身するとき | トリル(音をふるふると揺らす) |
こうして合図を決めておくだけで、子どもたちも「この音が来たらこう動く!」と自然に覚えてくれます。
中でも「止まれ!」の合図の音は、慣れるまで迷いやすいポイントです。
慣れないうちは、リタルダンド(だんだん遅く)+デクレッシェンド(だんだん小さく)で音を消していくのが一番焦らずにできる方法です。音の変化を感じながら、子どもたちの動きも自然に止まっていきます。
慣れてきたら、音をぴたっと止める、フェルマータ(音を伸ばして溜めを作る)など、他の手法も取り入れてみてください。合図のバリエーションが増えると、子どもたちの「聴く力」もどんどん育っていきます。
コツ④ まず「弾きながらしゃべる」練習から始める
弾き歌いってとても難しいですよね。ピアノを弾きながら声を出すというのは、実はとても高度な「同時進行」です。
実は、この「同時進行」はリトミックの本質でもあります。リトミックには「複リズム(ポリリズム)」や「カノン(追いかけっこのように少しずらして動く)」といった、手と足、体の別々の部位が異なるリズムを同時に動かす活動があります。ピアノを弾きながら声を出すというのは、まさにそれと同じ感覚。先生自身がリトミックを体験しているんです。
だからこそ、練習の順番が大切です。
ステップ① 一番シンプルな伴奏で、ピアノを弾きながら歌えるようにする
ステップ② 歌の代わりに、何でもいいので「しゃべりながら」弾く
ステップ③ それができたら、少しずつ伴奏のレベルを上げていく
ステップ②の「しゃべりながら弾く」は、内容は何でもOKです。「あいうえお、かきくけこ」と五十音を言い続けてもいいし、「今日はいい天気ですね〜」と適当につぶやいてもいい。本や新聞を声に出して読みながら弾くのも効果的です。
内容よりも、「弾きながら声を出し続ける」感覚に慣れることが目的なので、何を言っても大丈夫。この練習を続けると、レッスン中に子どもへ自然に声掛けができるようになります。「止まれ〜!」「もっと大きく!」と言いながらピアノが弾けるようになったとき、リトミックが一段と楽しくなりますよ。



伴奏を複雑にするのは、声が出るようになってから。
焦らなくて大丈夫です。
まとめ:ピアノは「完璧」じゃなくていい
【この記事のまとめ】
- ピアノに必死になりすぎると、子どもを見る余裕がなくなる
- リトミックの伴奏は「正確さ」より「子どもへの合わせ方」が大事
- 基本はC・F・G の3和音。難しければまず主音1音だけでもOK
- テンポを崩していい。むしろ変えることこそがリトミック
- 「止まれ」の合図はリタルダンド&デクレッシェンドがおすすめ
- まず「弾きながら何でもしゃべる」練習で、声を出す感覚を身につける
ピアノに必死になっていた頃の私は、正直なところ、全然楽しくなかった。でも伴奏をシンプルにして、子どもたちの顔を見るようになってから、リトミックが好きになりました。
ピアノが得意じゃなくていい。大事なのは、子どもたちの前に立ったとき、一緒に音を楽しめるかどうかだと、私は思っています。
あなたのリトミックが、明日も笑顔あふれる時間になりますように。
私は音楽大学の管楽器専攻出身なのですが、実はピアノがかなり苦手でした。「音大卒なのに?」と思われそうですが、それが現実…笑。だからこそ、この記事を書きたかったというのもあります。




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