はじめまして。きいのおと を運営している、きい です。
このブログを訪れてくださった方は、きっとリトミックや音楽あそびに関わっている方、あるいはこれから関わろうとしている方だと思います。
自己紹介を書くにあたって、「経歴をきれいに並べるだけ」にはしたくないと思いました。わたしがこのブログを始めた理由、それは自分が「できなかった経験」をたくさん持っているから。同じように悩んでいる誰かの、小さな助けになれたら、という気持ちからです。
音大を卒業して、気づいたこと
わたしは音楽大学で管楽器を専攻していました。正直将来のことは全く考えず、「音楽が好き」という気持ちだけで進んだ道でした。4年間、ソロやアンサンブル、オーケストラや吹奏楽と盛りだくさんで楽器と向き合う日々でした。
でも、卒業してからしばらくして気づいたことがあります。
わたし、ピアノがほとんど弾けない。
実は3歳からピアノを習っていました。ただ、ピアノの先生が母の友人ということもあり甘えもあってか、練習をほとんどしない生徒でした。毎週レッスンの日が来るたびに「あ、今週も弾いてない」と焦る。それでも優しい先生がずっと待っていてくれたので、音大を受験するにあたって最低限のソナタをなんとか弾くくらいでそのまま大学へ進んでしまいました。
管楽器専攻だったので、大学でも副科ピアノはありました。しかし専攻楽器のほうの練習に時間をとられ、レッスンの担当教員にはいつもため息をつかれていました。簡単なソロ小品を楽譜通りに弾くのが精いっぱい。リトミックを学び始めた当初は、「子どもたちの前で即興で弾く」なんて、夢のまた夢の話でした。
音楽を学んできたのに、ピアノが弾けない。この事実は、しばらくのあいだ、わたしのなかで大きなコンプレックスでした。
遠回りした末に、保育の世界へ
専攻楽器で食べていける実力もない。大学卒業後、わたしは一般企業に就職しました。音楽とは関係のない仕事です。でも、心のどこかでずっと「音楽に関わる仕事がしたい」という気持ちが消えませんでした。
そこから数年後、思い切って保育業界に転職します。最初は事務としての入職でしたが、働きながら保育士資格を取得し、ときどき保育補助にも入るようになりました。
その職場で、「リトミック」という言葉に出会いました。同じく事務として働いていた先生が、子どもたちにリトミックを教えていたのです。活動の様子を見たり話を聞いたりするうちに、興味がどんどん大きくなっていきました。
その先生は、ポップスのバンドでキーボードを弾いている方でした。リトミックのレッスン中は楽譜を一切広げない。子どもたちの動きや反応を見ながら、すべてその場で即興で弾いていました。わたしにとっては、憧れというより、もはや別の生き物のような存在でした。音楽を身体で感じ、表現する教育法。音大で学んだ音楽の理論と、目の前の子どもたちの反応が、するりとつながる感覚もあって、「自分もやってみたい」という気持ちが抑えられなくなっていきました。
リトミック講師への道と、ふたつの壁
それからすぐに資格とスクールについて調べ、仕事終わりに夜間スクールへ通い始めました。スクールに通い始めて1年が経った頃、その先生が家庭の都合で退職されることになりました。職場から「引き継いでもらえないか」と打診をいただいたとき、正直なところ、うれしさと恐怖が同時にやってきました。あの先生の代わりなんて、とてもできない。でも、経験しなければ前に進めない。怖かったけれど、引き受けることにしました。まだ学んでいる途中でのデビューです。
いよいよ指導を始めてみると、壁がふたつあることに気づきました。
ひとつは、ピアノ。即時反応、テンポの変化、強弱の表現——子どもたちのからだの動きに合わせて、リアルタイムでピアノを弾く。それがリトミックの根幹のひとつです。でも、わたしにはそれができませんでした。楽譜通りに弾くのが精一杯で、子どもたちの様子を見ながら即興で変化させるなんて、到底無理。
もうひとつは、しゃべること。子どもたちに語りかけながら活動を進めるのも、リトミックには欠かせません。でも、もともとしゃべることが得意ではないわたしにとって、これもまた大きな壁でした。ピアノを弾きながら同時にしゃべるなんて、自分にできる気がまったくしなかった。
レッスン中、何度も焦って、何度も落ち込みました。「音楽をずっとやってきたのに、なんでこんなこともできないんだろう」と、自分を責めたこともあります。
そんな新人だった頃のこと。ある園児が、キラキラの笑顔でこう言ってくれました。「きい先生のリトミック、とってもたのしかった!」——その瞬間が、今も忘れられません。うまく弾けなくても、うまくしゃべれなくても、子どもたちには届いていた。その言葉に背中を押してもらいながら、続けてこられたと思っています。
「私でも弾ける」を目指してアレンジしてみたら
あるとき、職場の生活発表会でリトミックをやることになりました。クリスマスの時期だったこともあり、発表の最後に「赤鼻のトナカイ」をうたうことになりました。せっかくだから、おしゃれに弾いてみたい。でも世の中のおしゃれな楽譜は難しすぎる。
それなら、「私でも弾ける」をモットーに自分でアレンジしてみよう。そう決めて楽譜を作りました。せっかくだからとYouTubeで動画を公開して楽譜を販売してみたら、予想以上に多くの方に見ていただき、購入してもらえるようになりました。
こういう楽譜を求めている人が、たくさんいる。そのことを知った出来事でした。ピアノが得意でない人の気持ちがわかるからこそ、作れるものがある。苦手だったわたしの経験が、誰かの役に立てるかもしれない——そう思うようになりました。
今のわたし
現在は、巡回リトミック講師・ピアノ講師として、子どもたちと音楽で関わる日々を送っています。娘も生まれ、母としても毎日が発見の連続です。
育児の合間に、このブログ「きいのおと」を書いています。リトミックの指導案、ピアノ伴奏のコツ、講師として働くことのリアルな話——自分が「あのとき知りたかったこと」を、できるだけ丁寧に書いていきたいと思っています。
ピアノが得意でなくても、遠回りしてきた経歴があっても、子どもたちと音楽で関わることはできる。そう信じているし、このブログがその証明のひとつになればいいなと思っています。
きいのおとで発信していること
このブログでは、主に以下のテーマで発信しています。
- リトミック指導案:季節・年齢別の活動アイデアと指導のポイント
- ピアノ伴奏のコツ:苦手な先生でも現場で使える弾き方・曲の選び方
- リトミック講師の仕事:資格取得・働き方・キャリアのリアルな話
楽譜やリトミック指導案のPDFデータも販売しています。ブログ記事と合わせて、現場ですぐに使える形でお届けできるよう作っています。
最後に
「ピアノが苦手」「経験が少ない」「自分に講師が務まるか不安」——そんな気持ちを抱えながら、それでも子どもたちのために頑張っている先生たちが、たくさんいると思っています。
かつてのわたしも、そのひとりでした。
このブログが、そういう方のそばに置いてもらえるような存在になれたら、とても嬉しいです。
これからどうぞよろしくお願いします。
きい

