「リトミックって、なんとなく楽しそう。でも、正直どんなことをするのかよくわからない……」
リトミックに興味を持ちはじめた頃の私も、まさにそうでした。名前は聞いたことがある。でも、実際に何をするのかはよくわからない——そんな状態で保育の職場に転職して、初めてリトミックと向き合うことになりました。
この記事では、リトミックってそもそも何なのか、他の音楽教育と何が違うのか、そして実際のレッスンではどんなことをするのかを、現役リトミック講師の視点からやさしく解説します。「リトミック講師になりたい」「保育にリトミックを取り入れてみたい」と思っている方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。
- リトミックの定義と生まれた背景
- ピアノ教室・音楽の授業との違い
- 実際のレッスンでやること
- リトミックで子どもに育つ力
- リトミック講師になるための最初の一歩
リトミックとは?音楽を「身体で覚える」教育法
リトミックは、20世紀はじめにスイスの音楽家・エミール・ジャック=ダルクローズが考案した音楽教育法です。
ジャック=ダルクローズはある気づきを持っていました。それは、「音楽を耳や頭だけで理解しようとしても、本当の意味で音楽を感じることはできない」ということ。リズムや拍感は、楽譜を読んで「知識として覚える」ものではなく、身体を動かすことで初めて、身体の感覚として染み込んでいくものだというのが、彼の根本的な考え方です。
たとえば「4分音符は1拍」と頭で覚えることはできます。でも、そのリズムに合わせて身体が自然に動く、音楽を聴いた瞬間に足がステップを踏む——そういう「身体が反応する感覚」は、実際に身体を動かす経験を重ねないと育ちません。
リトミックが目指しているのは、まさにこの「身体で感じる音楽」。音楽が頭の中の知識ではなく、身体の一部になっていく状態です。
リトミック=音楽を身体全体で感じ、身体の感覚として身につける教育法
リトミックについて、よくある誤解
リトミックという言葉を初めて聞いたとき、こんなふうに思う方が多いようです。
「音楽に合わせて身体を動かす……要するに、ダンスみたいなもの?」
気持ちはよくわかります。私も最初はそんなイメージでした。でも、少し違います。
ダンスは「決まった動きを覚えて表現すること」が目的です。振り付けがあって、それをきれいに揃えることがゴールになります。
リトミックが大切にするのは、もう少し手前の部分。「音楽を聴いて、身体が自然に反応する力」を育てることです。決まった振り付けはなく、音楽の変化に子ども自身が感じて応える。その反応のプロセスそのものが、リトミックの学びです。
ですから、リトミックには「正解の動き」がありません。同じ音楽でも、それぞれが別の動きをしていても、その子が感じたことが動きに表せていれば正解です。
リトミックは「上手に動けること」がゴールではない。音楽に身体が反応する感覚を、繰り返しの体験の中で育てていく教育法です。
実際のレッスンでは、何をするの?
「なんとなくイメージはわかった。でも、具体的には何をするの?」
そう思った方のために、実際のリトミックレッスンでよく行う活動をご紹介します。
音が止まったら、身体も止まる
ピアノの音が鳴っている間は自由に歩き、音が止まった瞬間にぴたっと止まる——シンプルですが、子どもたちが大好きな活動のひとつです。「聴く→瞬時に反応する」という体験を、遊びの中で自然に積み重ねます。
テンポに合わせて動く
ゆっくりな音楽のときはゆっくり歩く、速くなったら小走りに。音楽の変化を身体で表現します。子どもたちは音楽をよく聴いていないと動けないので、自然と「耳を澄ます力」が育っていきます。
音の強弱を身体で表現する
大きな音のときは身体を大きく広げて、小さな音のときはそっと小さくなる。音の強弱という音楽の要素を、身体の動きと結びつけて感じていきます。
即興で表現する
「この音楽、どんな動物に聴こえる?」——そんな問いかけから、子どもたちが自由に動物になりきって動きます。正解はなく、それぞれの感じ方が尊重される時間です。

どの活動も、子どもたちが本当に楽しそうに取り組んでくれます。「音楽って身体で感じるものなんだ」と、現場に出るたびに実感しています。
リトミックで、子どもに育つ力
リトミックの活動を通じて、子どもたちにはさまざまな力が育っていきます。
聴く力・集中力
音楽の変化に反応するためには、常に耳を澄ませていなければなりません。「次はどう変わるんだろう?」という自然な緊張感の中で、聴く力と集中力が少しずつ育っていきます。
リズム感・音楽的感受性
音楽に合わせて身体を動かす体験を重ねることで、リズムや拍感が身体に染み込んでいきます。楽譜を読んで覚えるのではなく、身体が自然に反応するようになっていく——これがリトミックならではの音楽的な育ちです。
身体のコントロール
「ぴたっと止まる」「ゆっくり動く」「大きく広げる」といった動きを繰り返すことで、自分の身体を思い通りに動かす力が育ちます。運動能力の発達にもつながる部分です。
表現力・創造性
正解のない活動の中で、自分なりの感じ方を身体で表現する経験が積み重なります。「自分の感じたことを表していいんだ」という安心感が、豊かな表現力の土台になっていきます。
社会性
友だちと一緒に音楽に反応したり、順番を待ったり、相手の動きを見て合わせたり。リトミックのレッスンは、自然と他者を意識する場面にあふれています。
音楽の力だけでなく、集中力・身体の発達・表現力・社会性まで。リトミックは子どもの育ちを幅広く支える活動です。
リトミック講師になるには?
「リトミックに興味が出てきた。でも、講師になるってどうすればいいの?」
難しく考えなくて大丈夫です。リトミック講師になるための入口は、意外と身近なところにあります。
まず知っておいてほしいのは、リトミック講師になるために「これでなければいけない」という唯一の資格はない、ということ。国内にはいくつかの団体がそれぞれ独自の資格・ディプロマ制度を設けており、自分のペースや目的に合ったものを選ぶことができます。また、海外の団体が認定する国際資格制度も存在します。国内資格からスタートして、ゆくゆくは国際資格を目指す講師の方もいます。
資格取得の方法もさまざまで、定期的に開催される講座に通うスタイルのものもあれば、地域で開催される単発の研修や体験講座から始められるものもあります。「まずは1回だけ体験してみる」という入り方をする方も多いです。
私自身は、約2年間でぎゅっと集中して学びました。学びの途中で、タイミングよくリトミック講師としてやらせてもらえる機会をいただいて——気づいたら現場に立っていた、という感じです。学び終わってから現場、という順番じゃなくてもいいんだな、と後から思いました。
まずは自分の住んでいる地域でリトミックの研修や講座が開催されていないか、調べてみるところから始めてみてください。思ったより身近なところに、入口があるはずです。
「唯一の正解ルート」はない。地域の研修や体験講座から、自分のペースで始められます。
まとめ:リトミックは、音楽を身体で覚える教育法
この記事では、リトミックの基本についてお伝えしました。
この記事のまとめ
- リトミックは、ダルクローズが考案した「音楽を身体で感じる」教育法
- ダンスとは目的が違う。正解の動きはなく、反応するプロセスが学び
- 実際のレッスンでは、音に合わせて止まる・歩く・表現するなどの活動をする
- 聴く力・リズム感・表現力・社会性など、子どもの育ちを幅広く支える
- 講師になる道は一つじゃない。地域の研修や体験講座から始められる
「リトミックって何?」という問いに、少しでも答えられていたら嬉しいです。
リトミックの魅力は、頭で理解するより身体で感じた方が伝わります。もし近くで体験できる機会があれば、ぜひ一度足を運んでみてください。「あ、これがリトミックか!」と腑に落ちる瞬間が、きっとあるはずです。
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