
「習い事にお金と時間をかける意味、本当にあるのかな……」
「リトミックって楽しそうだけど、効果って実際どうなんだろう?」
そんな風に思ったことはありませんか?
私自身、リトミック学ぶようになってから、「これって本当に子どものためになっているのかな」と自問した時期がありました。だからこそ、その疑問を持つ保護者の方の気持ちが、すごくよくわかります。
この記事では、科学的な難しい話を並べるのではなく、保育士・リトミック講師として現場で子どもたちと関わってきた中で「あ、これは育ってるな」と感じた瞬間を、正直にお伝えしていきます。
リトミックの効果を、保育士目線で見ていきます
リトミックは「なんとなく楽しそうな習い事」に見えて、効果が説明しにくいと思われがちです。
私も講師として活動を始めたばかりの頃、保護者の方から「リトミックって具体的に何の役に立つんですか?」と聞かれて、うまく言葉にできなかったことがあります。
でも、保育の現場とリトミックの現場、両方に長く関わってきた今なら、はっきり言えることがあります。それは、リトミックは「音楽の時間」であると同時に「発達を支える時間」でもあるということです。
ここからは、その効果を発達の側面ごとに、できるだけ具体的に、現場で見てきたエピソードとともにご紹介していきます。
リトミックの効果①:リズム感・聴く力が育つ
音を「聴いて」「感じて」「動きに変える」経験は、リトミックならではの学びです。
リトミックの土台は、ダルクローズ・メソッドの三本柱である「ユーリズミクス(動きで音楽を表現する)」「ソルフェージュ(音を聴き取る力)」「即興」にあります。この土台があるからこそ、単なる「音楽に合わせて体を動かす遊び」以上の意味を持ちます。
現場での実感エピソードとして、初めは音楽が止まっても走り続けてしまっていた子が、数回のレッスンを重ねるうちに、ピアノの音がふっと止まった瞬間にピタッと止まれるようになる、という姿をよく見てきました。これは「聞こえている」だけでなく「聴いて反応している」証拠です。この「聴く耳」は、後々、言葉を聞き取る力や、集団の中で指示を聞き取る力にもつながっていくと感じています。
リトミックの効果②:体の使い方・巧緻性が育つ
音楽に合わせて全身を動かすことは、体幹やバランス感覚、手先の器用さにもつながります。
リトミックでは、歩く・止まる・跳ぶ・這うといった全身運動から、指先を使った模倣や製作活動まで、幅広い体の使い方が登場します。
たとえば0〜2歳児のクラスでは、動物の動きを真似するだけでも、普段はあまり使わない筋肉やバランス感覚が刺激されます。うさぎのように跳ねる、たぬきのようにお腹を叩く、といった単純な動きの中にも、実は体幹の育ちが詰まっています。最初はぎこちなかった動きが、回を重ねるごとにスムーズになっていく様子は、講師として何度見ても嬉しい瞬間です。
リトミックの効果③:情緒・自己表現力が育つ
「表現していい」「間違えても大丈夫」という安心感が、自己表現の土台をつくります。
リトミックの場は、上手・下手を評価される場ではありません。音楽を聴いてどう感じたかを、体や表情で自由に表現していい場です。
現場では、普段は人前で表現することに消極的だった子が、リトミックの時間だけは伸び伸びと体を動かし、笑顔を見せてくれる、ということがよくあります。「間違えても大丈夫」「自分なりの表現でいい」という空気の中で少しずつ心を開いていく姿を見ると、リトミックが情緒面の育ちにも寄り添える活動なのだと実感します。
リトミックの効果④:集団行動・社会性が育つ
友だちと動きを合わせたり、順番を待ったりする経験が、自然と社会性につながります。
リトミックには、一人で動く活動だけでなく、友だちとペアになったり、みんなで輪になったりする活動も多くあります。
たとえば「順番に太鼓を鳴らす」といった活動では、自分の番を待つ、友だちの音を聴く、というやりとりが自然に生まれます。最初は自分の番以外に興味を持てなかった子が、次第に友だちの様子を見て拍手したり、応援したりするようになる場面は、集団の中での育ちを感じる瞬間のひとつです。
リトミックの効果⑤:想像力・表現の引き出しが増える
「こうかもしれない」と自由に想像する経験が、表現の引き出しを増やしていきます。
即興的な要素があるリトミックでは、「この音はどんな生き物の動きに聞こえる?」といった問いかけから、子どもたちが自分なりの答えを表現する場面が多くあります。
決まった正解がないからこそ、子どもたちの発想は毎回違い、講師として「そうきたか」と驚かされることも少なくありません。この「自分なりに考えて表現する」経験の積み重ねが、想像力や表現の引き出しを少しずつ増やしていくのだと感じています。
実は、大人になってから「自由に表現してください」と言われると、とたんに手が止まってしまう方は少なくありません。「正解を探してしまう」「人の目が気になる」というのは、日本の文化の中で育つ過程で、多くの人が身につけてしまう感覚のように思います。だからこそ、正解のない表現を「恥ずかしい」と感じる前の乳幼児期に、自分なりに考えて表現する経験を積んでおくことには、大きな意味があると感じています。
大切なこと:即効性を求めすぎないでほしい
ここまでお伝えしてきた効果は、どれも「数回で劇的に変わる」ようなものではありません。
正直にお伝えすると、リトミックの効果は、テストの点数のようにすぐに数値化できるものではありませんし、「これをやれば必ずこうなる」と断言できるものでもありません。
子どもの発達には個人差がありますし、その日の体調や気分によって、できることも変わります。だからこそ、「今日はうまくできなかった」「まだ変化が見えない」と焦る必要はまったくありません。
保育士・講師として大切にしているのは、「今日はこんな一瞬があったな」という小さな積み重ねを、長い目で見守ることです。リトミックは、即効性のある魔法ではなく、日々の中でじわじわと育っていくものだと捉えていただけたら嬉しいです。
まとめ
リトミックの効果は、リズム感や聴く力、体の使い方、情緒面、社会性、想像力など、多方面にわたります。ただしそれは即効性のあるものではなく、日々の積み重ねの中でゆっくりと育っていくものです。保育士・講師として現場で見てきた小さな変化の一つひとつが、その何よりの証拠だと感じています。
「効果があるかどうか半信半疑だった」という方も、ここまで読んでいただいたことで、リトミックという時間の意味を少しでも身近に感じていただけたら嬉しいです。






